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2006.03.09

ウェブ進化論

ウェブ進化論梅田望夫氏の『ウェブ進化論』を読んだ。
この本は2月10日に発売されて、速攻全国で売り切れ、2月15日には第二刷をしていて、今もばんばん増刷中らしい。
この手の本がここまで売れるっていうのはなかなかに珍しい。それほどまでに「web2.0」は世界中を取り巻いていて、いよいよウェブの世界がリアルの世界と仲良くなりだしたということなのだろう。
文章を書く専門家ではいらっしゃらないようなので、論の展開の仕方とか、いわゆる「本」としての価値はそこまでなかったものの、情報としての価値はすごいものがある。ウェブにどっぷりはまっているような人から「ウェブはあくまで生きていくためのオプションだ」とか「ウェブは怖いし、嘘ばっかりだし」っていう風に思っている人まで、ネットを使う人全てに向けられた本だと言っていい。たったの250ページ。是非ご一読を。
著者の言葉を使えば、ビル・ゲイツは「こちら側」(現実の世界orローカル環境)の世界でトップをとった。で、グーグルをはじめとして最近のweb2.0的な企業(はてなとかドリコムとか)は「あちら側」でがんばっていると。その動きにマイクロソフトはついていけていないけど、これからは知全体が「あちら側」で保存されるようになり、全世界の人たちと共有できるようになる。今までそれぞれの頭の中だけにあった考えや意見、情報が色んなところでオープンになっていくことで、色んな情報とぶつかりあって、さらに豊かなそれになるという具合だ。
わかりやすいのがGoogleのGmailで、Gmailはwebフリーメールなのに2GBのオンラインストレージが各ユーザーに割り振られる。今まで「フリーメールは容量が少ないから」という理由でoutlookを使っていた人が、web経由でどのパソコンからでもメールを見られる環境になる。
他にもmixiをはじめとするSNSも「あちら側」で人間の関係性を構築していくものだし、del.cio.usはてなのソーシャルブックマークなどはブラウザーで各ユーザーが保有していたブックマークをwebに公開しようというもの。これは案外便利で、同じサイトをブックマークした人を教えてくれるから、その人が他にどんなページをブックマークしているかっていうのも公開されていて、自分の知らない情報にたどりつける、新しいネットサーフィンの可能性を示している。
わかりやすいように「あちら側」「こちら側」という分け方をしているんだろうけど、今後その垣根はなくなっていくだろうと思う。モバイルの発展が最近すさまじくて、きっと人は携帯電話のメールやインターネットではあんまり「あちら側」っていう意識はしないからだ。
「web2.0」に関してはお客さんに知りたいと言われて一度がっつり勉強していたので、新しく学んだことはとくになかったけど、どういう経緯で「web1.0」から「web2.0」に移行して、やっぱりGoogleってのはとんでもなくすごくて、じゃあこれからどういう風になっていくのかな、っていうところをすごく考えさせてくれる本だった。
内容についての感想をもう少しちゃんと書きたいのだけど、あまりに長くなりそうだから何回かに分けて書こう。
ということで、日々結構な量のweb関連情報を摂取している。この業界は毎日毎日新しいサービスがでてきて、本当に面白い。これからきっと、すごいことになる。やっと、インターネットの本当の可能性をみんなが考え始めている。
って言ってもまだwindoes95がでて10年しか経っていないわけだけど。
そんなweb情報も、すぐ忘れちゃうからこれからはここに記録していくことにしよう。
梅田さんはじゃあ次は何がくるのかっていうところまでは明らかにしていない。
読みながら、ずーっとこの流れとcinraがどういう風にくっつくか考えていた。というか、cinraはもとより、文化をつくっていこうとしているあらゆる動きは、これとくっつかない手はないのである。
自分なりに、その方法論が見えて来た。次の5年、10年、面白くなっていきそうだ。
どんな形であれ、歴史は繰り返すのだと思う。
<りんく>
梅田氏のブログ「My Life Between Silicon Valley and Japan」
ITproの梅田氏のインタビュー
asahi.comの梅田氏のインタビュー
amazonで買う『ウェブ進化論』
<what is “web2.0″ ?>
CNETjapan「web2.0ってなんだ?」
CNETJapan「web2.0の現在」

2006.03.05

アートツアー

今日はマガジンのアートコンテンツのみんなでアートツアーを決行。
マガジンの企画の時期だけ集まって話し合うというより、頻繁に一緒に展示に行ったり勉強をしたりしていた方が、いざ企画をするときに絶対にいいものができるだろうと思って、はじめてみた。
完璧な快晴で、すっかり休日気分。
いざ、原美術館へ。
オラファー エリアソンの「影の光」展。テートモダンで展示をした時の写真が印象的で、覚えていた。光や時間、色などをものすごく人為的に利用しているのに自然な空間をつくるという作風が、なんだかとても新鮮だった。写真ですが、ご覧あれ↓。
テートモダンでの展示風景。
太陽つくっちゃってるよ!
Beauty 1993
タイトルの通り、美しいの一言。
Room for one colour 1997
部屋が黄色の光、一色。なんとそこにいる人たちやモノが全部モノクロに見えるというわけのわからない空間。びっくりな部屋でした
という具合。コンセプチュアルではなく、ただ、感覚的にきれいであり、おどろきなのである。そういうダイレクトさを現代アートに組み込むその方法論が、ものすごく斬新だった。
原美術館
品川でランチを食べ、その後恵比寿へ。エディターの二人は取材があるので、ここでお別れ。男3人で東京都写真美術館でこれも5日まで行われている「文化庁メディア芸術祭2006」に行く。
これは文字通り、毎年文化庁が主催しているメディアアートやCG、ゲーム、コミックも含めた芸術祭。受賞作品の映像がwebサイトから見られる。
大賞:Khronos Projector
優秀賞:アニマ
個人的に一番印象的だった作品。ストップモーションのリアリティーがすごい。是非見ておくれ。
他にも技術的に、あるいは造形的に感心する作品がたくさんあった。毎年この芸術祭は面白い。ただ、人が多すぎる。作品数も多すぎる。映像が100本以上上映されてるんだもん。
面白くはあるんだけれども、いわゆる「アート」というのとは違う。テクノロジーを駆使しているから面白いんだけど、作品としての深みはない。それはよくも悪くもこの芸術祭の特色なんだろう。
対称的な展示を見てヘトヘトになったぼくらはカフェに入って談話。
どうやったらアートが面白くなっていくかをひたすら話す。土曜日の昼下がりに、なんていうブルジョアライフだ、笑。
ただ、事態がそんなに容易いことではないことは誰の目からも明らかだ。二言目には「難しいよね」になる。そう、難しいのだ。だからこそ、やれたら面白いというわけだ。

2006.03.01

cinra、3年経ちました。

今思い出したんだけど、cinraは3周年を迎えました。笑
はじめてサイトをアップしたのが2003年の2月28日。たしか。。。
あっという間とは思いつつも、不安だらけで1人で構想していたあの頃を思い浮かべると、こんなに最高な仲間や多くの方々と出会えただけで、3年以上の価値がある。
やりたいことなんてまだ5%もできてないし、今やっていることももっといい環境をつくっていきたい。もっといろんなことを知って、いろんなことにビビっときたい。日々是、精進です。
なんにせよ節目ということで、一人残らず、ありがとう。ありがとさん。ありがとうございます!
これからもよろしくお願いしまーす!

2006.02.26

アートと話す/アートを話す

conversation with art, on art今日は打ち合わせをいくつかした後、オペラシティーアートギャラリーで開催中の「アートと話す/アートを話す」に行って来た。
東京オペラシティ アートギャラリー
今年はドイツ年ということで、色々とドイツにまつわるイベントが開催されているんだけれども、これもその一環。ダイムラークライスラーのアートコレクションからもってきた展示。
展示されていたのは構成主義、バウハウスなどで有名なヨハネス・イッテンやヨーゼフ・アルバース。そのあたりから入っていってミニマル、コンセプチュアルへという流れをドイツやオランダの作家を中心にスポットを当てていた。〆はロバート・ロンゴやアンディ・ウォーホルなどのポップアート。アメリカを中心として商業広告とアートが限りなく近寄った時代を紹介している。
てなわけで、基本的に20世紀中盤以降のアートの流れをものすごく大雑把に俯瞰した展覧会だった。作品それぞれについては他の展示で目にした作家が多かったからあまり衝撃はなかったものの、この展覧会はキュレーションの仕方が素晴らしい。作品の配置や構成はもちろん、その他色々な工夫がされていた。
入場の際に渡されるガイドブックがある。
何も難しいことは書いていなくて、それぞれの作品を平易な質問を投げかけながら紹介している。例えば「この絵は何色でつくられている?」とか「あなただったらこの作品をどうやって配置する?」とか。またこのガイドブックのデザインが小気味よい。おまけにノート欄が随所にあって、好き勝手に書き込んでよいという。いわば、能動的に作品と関わるためのツール。
美術館の社会的役割が収蔵、企画、研究、教育だとすれば、今その中でまさに問われている「教育」について真剣に考えて企画されたものだった。ガイドスタッフがナビゲートする「ギャラリー・クルーズ」も無料で行われている。これがまた人気らしい。
全く絵が描けないのに、ぼくはどうしてこんなに絵が好きになったんだろうとふと考えさせられた。小学校の頃、どんな美術の授業であれば絵に興味をもったんだろう。正直、全くわからない。学芸員の方々は本当にがんばっていらっしゃる。
そういえば、絵の具を手にたっぷり塗って机をグチャグチャに塗りたくった幼稚園での思い出は、今でも覚えている。あれは楽しかった。不思議と、絵の具が混ざり合った色までイメージとして残ってる。
視覚であれ聴覚であれ、そういうイメージをたくさん残せるのがいい教育なんだろうな。
最近、20年後も残っているようなイメージを感じていないような気がする。誰かがそういうのを持って来てくれる時は終わったから、自分でつかみにいかなくっちゃいかん。

2006.02.24

確定申告、法律

確定申告の時期だ。
1年間毎月帳簿はつけていたものの、相当にめんどくさい。ただ、当たり前だけどこうしてみるとどういうリズムでcinraの中でお金が動いているのかが一目瞭然になる。純利益率はさておき、年間を通したら結構な額のお金が動いているということに改めて驚くと同時に、その責任の大きさを感じる。立派な経済活動だ。今年、これと比べてどれだけ大きくなれるかというのも、当然考える。自分の行動と数字とを、毎日重ね合わせながら生きていく道だ。わかりやすくていい。
トラックボールわけあって、今まで使っていたトラックボールを万作君に譲渡することになった。一口に言えば、おもちゃをとるジャイアンと、とられたスネオである(笑)。それと同時にぼくの手元にはノートPCの比率に対してものすごい反・省スペースなトラックボールが舞い降りてきた。レベルアップ。ケンジントンである。どうやら彼はいいジャイアンらしい。笑
ホイールもあわせてボタンが11個ある。ちょっとまだ使い慣れないけど、これは相当作業効率化になる。しかしこの観てくれと言ったら、占いか何かに使うもののようだ。
そうそう、またおかしな法律が施行されそうだ。
PSE法。簡単に言えば中古の家電は許可を得ている物以外売っちゃダメよ、というものなのだが、例えば中古楽器店やハードオフとか、営業を見直さなければならないところも多い。中には店をたたんでしまうところもある。施行は4月1日。早い。。
例の松下のヒーターの出来事のように、過去の家電は危ないから使わないように、ということなんだが、「かわりに新しい物を買いましょう」という旧体制の大企業による苦し紛れの主張と言えなくもない。中古で流通される商品は、その製作元には当然お金が入らない。ブックオフを憎む出版社や書店は多いらしいが、止められない。電気用品なら「危ない」を理由に止められましょう。この論理。。。
いや、危ないのは一部本当なんだろうけど、もう少し中小企業に対して柔らかい法律にしてあげてもいいのではなかろうか。
ぼくは個人的にビンテージのシンセなんかを求めるほど音楽に造詣は深くないのだけど、坂本教授を含め多くのミュージシャンがこの法律を緩和しようとがんばっている。単純にこうした法律によって表現が抑制されてしまうのは、なんとも悔しい。
是非ご署名を。
http://www.jspa.gr.jp/
確定申告にせよ、この法律にせよ、国民は決められたルールにしたがって生きて行かなければならない。むしろそのルールがなかったら大変なことになるし、それによって人間が文明社会で生きていけるということもまた事実だけど、理不尽なものも中にはある。ただ、理不尽だと思うこのぼくも、そのルールによって生きているぼくが思う「理不尽」なのであって、いよいよ事態は哲学的だ。法律を生業としている人は、毎日が葛藤なのだと思う。これもまた、素敵な職業だと思った。