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2014.05.01

【本】グロースハッカーとは何者か?

 
久々に読んだ本について。
 
「グロースハッカー」という職業、ご存知でしょうか?
 
2013年くらいからちょこちょこ耳にするようになってきた気がしますが、ぼくの中では、「グロースハッカー? A/Bテストとかやる人でしょ?」くらいのイメージしかなく、読んでみたのがこれ。
 

『グロースハッカー』ライアン・ホリデイ
 
『グロースハッカー』ライアン・ホリデイ
※Kindle版はこっち
 
 
時代は、マーケターからグロースハッカーへ
 
今、シリコンバレーで最も競争率が高く、年収が高いと言われる職業の1つが、このグロースハッカーだそうです。Google、Facebook、Evernoteなどなど、あらゆるIT企業がしのぎを削って優秀なグロースハッカーを探しているんだとか。
 
グロースハッカーとは何か。誰のことか。
この本では、こう定義しています。
 
マーケターに代わる人。
マーケターとエンジニアのハイブリッド。
製品やサービスを劇的に成長させる人。

 
「ブランディング」や「マインドシェア」などの曖昧な言葉を使い、莫大な予算をCM制作や広告に投じるんじゃなく、できるだけお金をかけずに、その製品やサービスの「中」をひたすらこねくり回して成果を上げる人です。
 
著者のライアン・ホリデーは、アパレルブランド、アメリカンアパレルのマーケティングディレクター。旧来型のマーケターだった彼は、とある記事を読んでグロースハッキングに開眼。今や名だたるIT企業からひっぱりだこだそうです。開眼できるのがすごいです。変化。安住しない。
 
 
最初のグロースハッキングは、1990年代。
 
2011年あたりからシリコンバレーを起点に広がっていったこの「グロースハッキング」という考え方。イケイケなキーワードっぽいですが、典型的なグロースハッキングの事例は実は90年代、ネット黎明期にさかのぼるらしいです。Hotmailです。世界初の無料のウェブメールサービスですね。ダイヤルアップ接続を思い出します。ぴーごろごろ
 
で、Hotmailがはじまったとき、当然広告を打ちたかったそうです。でも無料のメールサービスだから広告なんて打ってられない。そこで考えたのが、「メールの最後に1行入れる」というグロースハック。使ってた人は見たことあると思います。「Hotmailで無料メールアカウントを作ろう」っていうやつ。このワンアイデアで、Hotmailは一躍世界に躍り出たわけです。これが、1995年の出来事。グロースハックの真髄である、「バイラル要素は、製品の中に組み込め」の好例です。
 
この事例の他にも、DropboxやEvernote、最近日本でもサービスインしたUberなどなど、事例が盛りだくさんでした。事例だけじゃなく、実際にどんなツールや手法でグロースハッキングが行われているのかを紹介してくれているので、実用的。おまけにたぶん2,3時間もあれば読める。良くも悪くもサラっとしているけど、マーケターやプランナー、サービスをつくっている人にはオススメの1冊です。
 
 
毎日1%改善すれば、1年後に38倍になる。
 
巻末には、日本版の付録として、クックパッドのプレミアム会員事業のリーダーである加藤恭輔さんが執筆しておられます。クックパッドのグロースハックの具体例が記載されていて、それだけでありがたいかんじです。そして、ここに書いてあることがとてもしっくりきたので引用させていただきます。
 

グロースハッカーの仕事は、とにかくただひたすらに地味である。・・・今日より明日、明日よりあさって。たとえ微々たる成長でも、毎日繰り返していけば、1年後、2年後、3年後には、ものすごい成長を遂げている。たとえば1日に1%ずつ改善を続けていった場合、1年後には今のおよそ38倍になっている(1.01の365乗=37.78…)。2年後には1,428倍、3年後には、なんと553,939倍。

 
1%ずつの改善を1年続ければ、38倍。これは事件だ。事件。
母数は売上でも、会員登録率でも、PV数でもなんでもいいけど、1年間、1%ずつの改善をしていったら、38倍になるなんて、どういうこっちゃという話し。自分の中で、グロースハックという仕事の価値の大きさ、インパクトが理解できたのは、この一節のおかげでした。
 
 
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広告業界のパワーバランスとして、CMが強いからWebは後回しであるとか、「なんでその製品にその人?」っていう文脈なしの大物キャスティングとかは、日本の特異なメディア環境を考えれば絶対になくならないし、価値があることだと思います。それに、マーケターの役割が全部グロースハッカーに替わるなんて、ありえない。おまけに、日本はシリコンバレーじゃない。こういう冷静さは、最近とても大事だなぁと思います。煽らないでいただきたい。
 
でも、グロースハックって優しいなぁと思うのは、お金がなくてもできるから。むしろ、お金をかけまくったものに勝利することがよくあるから。なんか、正義の味方っぽくていい。
 
グロースハックは、そのクールな発想が初めに生まれたわけじゃないはず。資金力がないスタートアップが、世界に躍り出るためにはどうしたら良いのか。考えに考え抜いた結果、サバイブするためのパターンとして定着してきた、後付けの言葉なんだと思う。そこがイケてる。
 
本の最後には乱暴に、グロースハックに関連するブログや講義動画へのリンク集が山ほどのっているので、英語の訓練がてらあさってみようと思います。
 
『グロースハッカー』ライアン・ホリデイ
※Kindle版はこっち