2014.07.27
日本から回転寿司がなくなったら、ぼくの負けです。
ふと思い立ち、回転寿司の話しをしたいと思います。
どうでもいいことかと思いますが、ぼくは回転寿司が好きです。
寿司を安く食べられるし、わざわざオーダーをしなくてもいいというのも素晴らしい仕組みです。でも、ぼくが回転寿司を愛して止まないのは、それとは別の理由です。
回転寿司は、「新たな発見」を提供してくれる装置です。回っている寿司を見て、「あ、そういえばそれ食べたいな」って気づく。手に取る。食べる。うまい。幸せ。
これはメニューの文字面だけ眺めてもなかなかない気づきで、目の前で回っているからこそ生まれる気づきだと思います。この気づきが好きです。
しかしながら、最近の回転寿司はあんまりネタが回っていません。
これはほんとにもう、ゆゆしき事態です。
たしかに回り過ぎてクタクタになった寿司よりも、オーダーしてその場でつくってもらった方が新鮮でおいしい。みんながオーダーするなら、回っている寿司は廃棄されるだけの運命なので、コスト的にも非効率。だから、あんまり回さなくなる。はい、たしかにそうです。
でも、回っていないと、気づきはやってこないのです。
「食べたいと思うものしか食べない」ことは本当に幸せなことなんでしょうか?
これ、ここ数年インターネット界隈で話題の「セレンディピティ」というやつです。「セレンディピティとは」でググると、以下のような用語解説になってます。
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セレンディピティ(serendipity)とは、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。(wikipedia)
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セレンディピティは「偶然発見能力」ですが、その偶然の発見のためには個人の能力だけでなく、回転寿司のような「仕組み」もとても大切です。
でも最近は、この「新たな発見」がしづらい世の中になってます。
周知の通り、主犯はインターネットです。本屋とAmazonの話しでよく出てきますが、やっぱり本屋に行ってふと目にした本を買うという、あの新たな出会いが大事だよね、と。
そもそもインターネットが生まれたときに、人と情報が出会う方法は、いくつかの可能性があったはずです。けど、Googleによってそれは「検索」という手法に一本化されました。
他にも方法はいろいろあったけど、淘汰されて「検索」(Google)が残ったんだと思います。理由は抜群に効率がいいから。そして、広告商品としてとんでもない可能性がある手法だから。
でも、普段何気なくやってますが、検索って実は超高等テクニックです。検索するためには、2つの前提が必要なんです。1つは、探したいことが明確であること。もう1つは、それが言語化されてないといけないこと。この2つができていないと、出会いゼロです。
好みのタイプが明確で、しかもそれを言語化できていないと彼氏や彼女と出会えないとしたら、ほとんどのカップルはまだ出会えていないと思います。少子化で、人類はとっくに滅亡してます。
つまり、たとえGoogleが目指す「世界中の情報にアクセスできるようにする」環境が整ったとしても、その情報にアクセスしようとする意志が必要なわけです。でも、自らの意志で、自分の世界の外に出て情報に触れようとする、あるいは触れる環境に身を置こうとする人間は、どれくらいいるんだ? と思うのです。
ワタクシを筆頭に、ほとんどの人間は怠惰です。生存本能的にも、無理矢理に外の世界に出て自分を危険にさらす必要などないから、人間は遺伝子的に怠惰に設定されているんだと思います(なのでぼくが怠惰なのはしょうがないことです)。
でも、ほんとに自分の意志「だけ」をそこまで信用していいもんだろうか? と思います。
社会全体としては今後も「効率の最大化」を目指すようにひた走っていくので、この新たな発見や出会いは「効率的じゃない」という理由で、どんどん減っていく方向にいくだろうと思います。
でも、それは困る。
寿司は、やっぱり回っててもらわないとダメなんです。
突然自社の話しですが、CINRAのミッションは「人に新たな出会いを提供する」です。この「効率」と真逆にある「新たな出会い」をつくろうということで、メディアや広告のお仕事などをやらせていただいています。
大学の頃、ちょうどCINRAを会社にしようかと思ったくらいのとき、「インターネットのフィールドで、インターネットっぽくない戦い方で勝負してみよう」と決めました。なかなか厳しい勝負です。
極論ですが、日本から回転寿司がなくなったら、ぼくたちは負けたということになります。人が「新たな発見」を必要としなくなったということになるので。いや、極端ですかね。。。
世界の流れに逆行しても利益は出せないし、人に喜んでもらえないのでぼくには無理です。逆行できるほど自分を過信していません。ですが、なんとかして、眠っている好奇心の扉をこじ開けるような仕事をしていきたいなぁと思ってます。
なんか最後の方の熱量が上がっちゃったけど、回転寿司よ永遠に、という話しでした。