2015.04.30
【本】火星に住むつもりかい? 伊坂 幸太郎
前回の投稿でいろいろとお騒がせしちゃっていますが、
別で取材いただいたりするようで、後日、自分でもちゃんとまとめたいなぁと思っています。
横目に、このブログはこれまで通り平常運行でのんびりやってまいります。
さてさて。
無条件に新刊を即買いするのが伊坂幸太郎さんなのですが、今回もまた楽しく読ませていただきました。
火星に住むつもりかい? / 伊坂 幸太郎 (Amazon)
※以下、ちょっとでも事前情報を入れたくない方はご覧にならないことをオススメします
「平和警察」なる警察内の組織が生まれ、全国をまわり、その地域ごとに「危険人物」なる(本当は危険でない)人たちを次々にしょっぴき、拷問したり処刑したりする。というブラックな世界が描かれています。
特定秘密保護法案を受けて書かれた作品なんだろうなと読みながら思いました。
たしかにこういう社会がくるかもしれない、
自分もその一員にならざるをえないときがくるかもしれない、と読者に思わせる想像力のかき立たせ方が、さすがでした。面白かったです。
同時に、小説ってやっぱりいいなぁと思いました。
一言で説明しきれないメッセージや、
時にはこういう少し難しくてスルーされてしまいそうな
政治的なトピックを切れ味の良いストーリーで展開していく。
評論や説教ではなく、
ストーリーとして、メッセージを楽しく受け取っていける。
この「楽しく」って重要です。
楽しさや面白さがあれば、
その問題やトピックに何の関心もなかった人にまで届けることができるからです。
まさに、偶然の出会いです。
そして読み終わったあとには、
その著者が持っている思考をなんとなく共有できている。
この「なんとなく共有」っていうのも大事だと思います。
理屈でなく、感覚として共有する方が強かったりすると思うので。
プレゼンの手法として「ストーリーテリング」がありますが、
「読ませる小説」は、それ自体がまさに最高のプレゼンテーションなんだろうと思います。
(伝えたいメッセージが明確にあるかどうかは作品によると思いますが)
ネット上だとどうしても
1文は短く、わかりやすく、結論もクリアに書かないと読まれないし伝わりません。
YesかNoで白黒つけて、グレーは許容しない、
なるたけ140文字以内でまとめる。
そのかわり、伝播スピードは圧倒的。
普段、そういう情報環境に浸かりっぱなしなので、
たまに小説を読むと、小説が持つパワーがビシビシ体に効いてきます。
近い将来、オウンドメディアならぬ、
オウンドノベルみたいのができたりして。。。
そういった作家さんが持つ力とインターネットの伝播力がうまい補完関係があったらなと思ってたら、まさに最近ありましたね。
村上春樹さんの企画が。
作家さんの使う言葉は、
言語の密度というか、次元が違うなぁと思い知らされます。