2013.12.25

日本文化を海外に発信する、「スマートな戦略」はあるのか?

 
30度を越える暑さの中、街はクリスマスムード全開のシンガポールです。
フラフラ歩いていると、マライアキャリーを20回くらい耳にします。
 
さて、12月20日、シンガポールにてASIAN KUNG-FU GENERATIONとストレイテナーのライブが開催されました。日本ではフェスじゃない限り、対バンなどありえない豪華な2バンドだし近くで見られるしで、すごく贅沢な時間でした。
 
ライブも素晴らしくって、地元の人たちも大盛り上がりでした。
 

asian kanfu generation
 
「日本のカルチャーをどうやって広げていけばいいのだ?」というのは、シンガポールに来てからずっとぼんやりと考えていて、このライブをきっかけに、まとめておきたいと思いました。
 
 
以前もブログで書いたように、アジアではどこにいっても、エンタテインメントは韓国一人勝ちだなぁと痛感します。ファッションやコスメも、ぐいぐい来ています。
 
現地の若者に話しを聞くと「日本はいいものがたくさんあるのに、伝え方が下手なんだよ!」と怒られます。こちらに来てから、もうかれこれ何十回も言われています。こんちくしょう。
 
どうやら、2000年以降、日本のカルチャー情報が、あんまり国外に届いていないっぽいのです。みんなが知っている日本のアーティストの名前が2000年あたりで止まっています(一部の強烈なファンやアニメと食は除いて)。たぶん、ayuあたりです、主に。
 
もちろん、「韓国か日本か」みたいなつまらない二元論は間違っているし、KARAとか少女時代かわいいし、共存したいです。それでもやっぱり「どうしてそんなにスゴいことになったんだろうな?」って気になっちゃいます。
 
だって、どういう角度から見ても、ぜんぜん日本の作品は負けてないわけです。作品の問題じゃないのなら、あとは戦略の問題になってくるのだと思います(もちろん言語の問題もあるけど、それも含めて戦略)。
 
で、考えるのです。
 
 
「みんな『伝え方が下手』って言うけど、何かいい方法はあるんかいな?」と。
 
 
いや、そんな画期的な手法、あったらとっくにみんなやってます。
 
ミラクルは願っていても起きなくて、「戦略」って、その言葉の響きが持っているほど万能でスマートなものじゃない。お金さえ突っ込めばなんとかなることでもなく、結局はやることをきちっとやって、地道な活動を続けることしかないんだなぁと思うのです。それはもう、ビラ配りとか、そういうレベルで。
 
ビラ配りにだって、どういうデザインにするのか、キャッチコピーはどうすれば響くか、どういう場所で配ればいいのか、など、膨大なノウハウが必要なわけで、それはもう、泥臭いけど自分の足で動いてみて、やってみなきゃわかんないと思うんです。
 
デジタルにしても、YoutubeのオフィシャルPVが日本国外からだと見られないとか、ライブ中に写真撮っちゃダメで、ましてやソーシャルに拡散するなんてもってのほか、とか、そういうもどかしい部分を最適化して、地道にやっていかないといけない。
 
よく例として挙げられるアーティストtoeが海外ですごく人気なのは、インストバンド(歌=言語がないバンドだからハードルが低い)だからっていうことだけじゃなくて、そういうことをやっているからなんだろうなぁと思うのです。すごいです。
 
堀江さんの言葉をいただけば、
ゼロから小さなイチを足していくっていうやつです。
 
 
結局のところ、根本にあるのは「戦略」なんて頭の良いものではなく、「危機感」の問題なのだろうと思います。ネット上でブラック企業と批判されるユニクロの柳井社長がいつも言うのは、「茹で蛙」の話しです。徐々に暖まっていく鍋の中にカエルを入れておくと、その温度の変化に気づかずに死んでいく、という話しです。
 
韓国の場合、1997年のアジア通貨危機という「熱湯」を思いっきりぶっかけられたことで路線を変え、「外貨を稼ぐ」方向にシフトできたと聞きます。
 
で、こんなに偉そうに書いているぼく自身も、月に1度東京に戻ると、やるべきことのオンパレードだし、お客さんもぼくを必要としてくださるし、十分に忙しいから、安心な気がしちゃいます。けど、徐々に鍋のお湯の温度は上がっているんだなぁと、シンガポールに戻ると、振り子のように体感するのです。
 
 
teteatete
※「英語と中国語以外を話そう」という現地の若者が集まるイベントの様子。ドイツ語バルーンや韓国語バルーンには人が集まっていて楽しそうだけど、日本語バルーンには誰もいないというショッキングな光景……。
 
 
一目散に「海外だ!」と言うほど選択肢は少なくないし、そんなにすぐに結果が出るほど海の外はぬるくないんだと痛感します。でも、国内外、全方位で未来を想像して、どうやって期待感と危機感の両方を獲得していくかっていうのは、すごく重要と思います。今。
 
その意味で、今回のように、日本だけでも十分にたくさんのファンがいる素晴らしいアーティストが海を渡り、ライブをするというのは、本当に素敵なことだし、その演奏に心打たれました。
 
全体として見れば、道のりは長く、1回や2回で何かが変わるものではなく、5年10年とかかる大きくて地道な変化なのだろうなぁと思います。打ち上げ花火というより、農業。
 
 
長く時間はかかるかもしれないけど、
やっぱり目の前で、MJよろしく、『This is it!!!』って伝えられるパワーは、何にも勝っていました。
 
ご招待いただいたストレイテナーの堀江さん、マネージャーのWさん、イベント運営されたVivid Creationsのマホさん、ありがとうございました!